ケトジェニック食事法の方法と効果

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「ケトン体」という体内物質の名称を聞いたことがあるのではないでしょうか。

ケトジェニック食事法とは、糖質を制限することによって糖質の代替エネルギー源として脂質を摂取する食事療法です。この食事法によって血中のケトン体が増加するため、体重減少や糖尿病治療食として知られています。

新しい食事療法のようなイメージですが、その起源はいわゆる絶食療法で、近年になって血中ケトン体の量を増加させる食事方法が提唱されるようになりました。当初は1 gのタンパク質、10~15 gの炭水化物、そして脂肪分でエネルギーを充足させるという食事方法だったようです。これにより体内で炭水化物が不足
し、それに代替するエネルギー源としてケトン体の合成が促進され、体内で主要なエネルギー源として使用されることが知られています。この生理的な状態
が絶食時と類似しているため,ケトジェニック食事法は「擬似絶食」とも呼ばれています。

ケトジェニック食事法の効果

● 脂肪燃焼効果

普段、私たちの体は肝臓や筋肉内に蓄えられているグリコーゲン(糖)を体のエネルギー源としていますが、エネルギー源が脂肪に変わることで、脂肪の燃焼が活発になります。

● むくみ予防

体内に蓄えられている糖は、1gにつき1~3gの水分を溜め込むと言われています。ケトジェニック食事法で糖質過多を改善することにより、体内の不要な水分が排出されてむくみが改善されます。

● アンチエイジング効果

糖の摂り過ぎは内臓や肌への負担となります。これを改善し、かつタンパク質摂取量の増加と、摂取する脂質の質を改善することで、アンチエイジング効果が期待できます。

● 免疫力の向上

血糖値が安定することによって、免疫を担うホルモンであるコルチゾール、アドレナリンが活発になります。

● 体重の減少

糖がため込んでいた水分が抜けることにより体重が減少します。それに加え、脂肪も効率的に燃焼されていくため、早く体重を落とすことができます。

● 脳の活性化

脳のエネルギー源をケトン体に変え、良質な資質とタンパク質を摂ることで脳内の情報伝達がスムーズになります。

● 食後の眠気を抑える

食後眠くなるのは、血糖値を抑えようと分泌されるインスリンの働きにより体がエネルギー不足と誤認してしまうことが原因のひとつです。血糖値の急上昇を抑えることで、過剰なインスリン分泌による一時的な低血糖値状態を回避することができます。

● 空腹感を抑える

血糖値が安定することで、急激な血糖値低下がなくなります。これにより空腹感やイライラを解消することができます。

ケトジェニック食事法の実践ポイント

ケトジェニック食事法の実践ポイントは4つです。

(1) 糖質のコントロール

(2) 良質な資質の摂取

(3) 食物繊維の摂取

(4) タンパク質の摂取

(1) 糖質のコントロール

ケトジェニック食事法の効果を実感するには、第一段階としてややストイックに糖質制限を行います。

1日の糖質摂取量は60gが目安になります。

主食として1食につきどれくらいの量になるかというと、

● 白米 → 50g(お茶碗1/3程度)

● パン → 45g

● スパゲッティ → 75g

つまり、普段の1食分の量の1/3程度と考えればよいでしょう。

主食以外には下記のNG食材を避け、OK食材を積極的に摂るようにします。

<NG食材>
・ 果物
・ 砂糖入り飲料(清涼飲料水など)
・ ジュース
・ 根菜類(ニンジン、ゴボウなど)

<OK食材>
・ 肉類
・ 魚類
・ 卵
・ 大豆製品
・ 乳製品
・ 野菜類(根菜を除く)
・ 海藻類
・ キノコ類

(2) 良質な脂質の摂取

「良質な脂質」とは下記を指します。

・ オメガ3脂肪酸(αリノレン酸であるアマニ油、DHA・EPAを多く含む青魚など)

・ 中鎖脂肪酸(ココナツオイルなど)

・ オメガ9脂肪酸(オレイン酸であるオリーブオイル、アボカドなど)

(3) 食物繊維の摂取

食物繊維の摂取による効果は次のようなものがあります。

・ 糖質の吸収を穏やかにする。

・ 脂質の吸収を抑える。

・ 便のかさを増す。

・ 腸の蠕動運動を促進する。

これらの効果を最大限に発揮するためには、糖質・脂質を摂取するより前に、食物繊維の多い食材を食べましょう。いわゆる「ベジ・ファースト」ですね。

食物繊維を多く含む食材には、以下のようなものがあります。

・ 豆類
・ 穀類
・ 野菜
・ キノコ類
・ 海藻 等

つまり食事をする際には、これらの多く含まれている副菜やサラダを先に食べ、お肉類やごはんはその後にします。

和食やフレンチなどのコースでも、最初に野菜を多く含む前菜が出てきますね。和食コースでは締めとしてごはんは最後に提供されます。ちゃんと健康によい順序で食事が出てくるようになっているのです。

(4) タンパク質の摂取

タンパク質は、人間の体内で次のような大切な役割を担っています。

・ 体の組織を作り上げる。

・ 酵素やホルモンの材料になる。

・ 代謝を上げる。

どれも人間の生命活動には欠かせない役割です。

では十分なタンパク質を体に供給するために、1日にどれくらい摂取する必要があるのかというと、

1日の必要タンパク質摂取量 = 体重(kg) X 1 ~ 2g

であると言われています。

たとえば体重60kgの成人の場合、1日にタンパク質を60 ~ 120g 摂取するのが理想的、ということになります。

タンパク質を多く含むといわれる食材の一般的なタンパク質含有量を見てみましょう。

・ 肉・魚 = 100gあたり 20~25g
・ 卵 = 1個あたり 6 ~ 10g
・ 納豆 = 1パックあたり 8g
・ 豆腐 = 100gあたり 4 ~ 7g
・ 牛乳 = 100mlあたり 3g

ケトジェニック食事法は実践可能か

ここまで基本的なケトジェニック食事法について述べてきましたが、個人的な意見としては、専門家の指導なく効果的なケトジェニック食事法を実践するのは難しいと考えています。

また、その必要性もありません。

もともとこの方法が医療上の食事療法であったこともありますが、糖尿病患者であるなど特殊な事情がない限り、本来極端な糖質制限は必要ありませんし、ある病気の治療が目的なのであれば専門家の指導に従うべきです。

特段の食事療法を必要としない人がケトジェニック食事法に取り組もうとすると、主食の糖質(=炭水化物)を抑える反動で、肉類や脂質で空腹を満たそうとしてしまいがちになります。

日々の食生活にこの食事法の考え方を取り込む場合には、糖質制限を砂糖・菓子類の摂取を抑えることに置き換えて、その他の(2) 良質な脂質の摂取、(3) 食物繊維の摂取、(4) タンパク質の摂取 を積極的に意識して行うとよいと思います。

つまり、日々食べるものの量ではなく質とバランスを意識して食事をしてみてはいかがでしょうか。

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